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心理学ワールド 86号 特集 【教育領域】子どもの心理臨床と公認心理師 藤原 真一(公立教育相談センター) | 日本心理学会

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Academic year: 2021

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教育領域

子どもの心理臨床と公認心理師

 まず教育臨床の分野に入った経 緯から書くことにしよう。  大学院を卒業してから現在に至 るまでこのフィールドにいる。子 どもの臨床にことさら惹かれてと いうわけでも,不本意ながら…… というわけでもなく,成り行き, たまたま,偶然である。偶然と 言っても運命的な色彩はかなり乏 しく,いくつかの出会いには恵ま れたが現在まで至る道のりは大方 散文的なものであった。  次にこの分野について簡単に紹 介する。対象の多くは18歳くら いまでの子どもとその保護者であ る。主訴は一貫して不登校が最も 多い。学業不振や落ち着きのな さ,発達上の問題,育てにくさ, 情緒の問題などの他の主訴もある が,不登校にはそれらの主訴の終 着駅といった側面もあるように思 う。業務の主な内容はアセスメン トと面接,それに連携である。  アセスメントでは知能検査の要 求が年々増えてきている。この傾 向は当面弱まるようには思えな い。知能検査の価値は否むべくも ないが,Wechslerが言うように あくまでも知能はパーソナリティ の一部であるからできるだけその 子の全体像が反映されるようなア セスメントをと心がけている(経 済性の面で限界はあるけれども)。  子どもの臨床の特徴は相手が子 どもだということだ。彼らとの 面接の媒体は言葉であったり遊 びであったり,大概の場合はその 両方である。子どもたちは常に 若いので,彼らを相手にする臨床 家は子どもの心性を保ち続け易 い(childlikenessだ け で は な く, childishnessも含まれてしまうの は残念であるが仕方ない)。他方 で彼我の年齢差は開くばかりなの で老いを意識することもまた多 い。もちろん哀しくはあるのだけ れど,容易に統合されないこの矛 盾はなかなか面白い。子どもの臨 床の魅力のひとつだろう。  連携は特に教員とのものが多 い。次が福祉職である。同じ対象 (子ども)に関わる職種とはいえ, 捉え方やアプローチは違う。その ため異業種とのやり取りには幾分 芝居っ気が必要になる。しかしこ れがどうも難しい。場数はそれな りに踏んだはずなのだが舞台慣れ には程遠い。言葉を発するといか にもセリフ然としてしまうか縺れ てしまうことが多い。以前よりは ややましになったが,思わぬ失策 行為にしてやられることはちらほ らある。  さて,ここからは公認心理師に 期待することを書く。  長年,臨床心理士として働いて きたが,そこで求められてきたこ とと公認心理師として求められる こととの間に大きな違いがあるよ うには思えない。もちろん待遇等 で良い方向に転がることは希望し ているが,世の中の人々が心理の 人間に期待すること,そしてその 期待の程度はこれまでこの仕事に 携わってきた人たちに向けられた ものと大きくは変わらないだろう。  ではそうした期待に応えるため に必要なことはなんだろうか。自 分ならどんな心理にみてもらいた いかと自問するとそれは明確にな る。弱っている時に望んでいるの は安心と希望を与えてくれること であり,それをあてにできる善意 である。この原稿で求められてい るのは感傷を排した,専門家とし ての意見だとは思うし,善意だけ では不十分であることは重々承知 している。しかし,種々の思想や 技法,診断名の消長を想うと,ま ずはより確実なものを強調せざる を得ないのである。幸い,これま で見てきた幾人もの同業者は,相 当量の善意の持ち主であった。生 きていく上でも,またこの仕事を 続けていく上でも必要となる信頼 感を得ることができたのである。  善意の次に来るのは現実感覚で ある。生活知や人間知とも言え る。教養と言っても大きく外れな いとは思うが,洗練された上質な 部類の常識と言ったほうがしっく りくる(私見だが善意よりも現実 感覚のほうが希少である)。心理 の人間として「常識」や「生活」, その他それに類する言葉が持つ無 神経さや権力性,抑圧性にはセン シティブでなければいけないとは 思うが,クライアントの利益を考 える時にそれらを抜きに考えるこ とはできないのである。  専門性と言ってまず連想される 学知はこれらの基盤に立たなけれ ば無力である。これは資格の名称 が何であれ変わらない。  残念なのは善意にせよ,現実感 覚にせよ,制度化されたプログラ ムによる育成にはなじみにくいと いうことだ。他方で経験と年齢を 重ねることでおのずと身につくも のでもない。現在のところ,見出 した答えはそれぞれその都度のも のと心得,自己との対話を続けて いくことのほか道は思いつかない。 公立教育相談センター 相談員

藤原真一

(ふじわら しんいち) Profile─藤原真一 専門は臨床心理学。公立学校でのスクールカウンセラーも兼任。大学院 修了後,臨床心理士として教育領域での心理臨床に従事。不定期で企業 の人事関連のアセスメントも行っている。公認心理師はGルートで受験。

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